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Diaryではない何か。

暖簾の向こう側

今日の「たかじんのそこまで言って委員会」で、警察の犯罪捜査と個人情報の保護に関する議論があって、それを見ていて昔の事を思い出した。



昔、ある地方のビデオレンタル店(全国チェーンではない)で仕事をしていたときの話。

朝一、カウンターに二人組の刑事がやってきて、こう言った。


「市内で婦女暴行事件が起こってその捜査をしている。ついてはおたくのレンタル会員の中で、この2週間のあいだにアダルトビデオを一度でも借りたことのある会員全員分の名簿を提出してほしい。」


それはいくらなんでもちょっとムリじゃないのと思いつつ経営者に話を通したら、すんなりOK。アルバイトの大学生をつかってデータの書き出しをさせることになった。

当時の店にはまだPOSなんてものはなくて、会員管理は全て手書きだったからそれをリストアップして書き写すのは大変な作業だった。バイト一人をその作業専任にして半日以上かかった。


途中そのバイトがちょくちょくこちらに伺いを立てにやってくる。

 「オレ、実は先週ここで1本借りたんですけどやっぱ正直に書かないとだめっすかねー」
 「いいよ、それは書かなくても」
 「友達がけっこう借りてるんですけどそれも抜いちゃっていいすか」
 「うーん……」
 「○○についてはどうしますか」
 「知らん」
 「○○は?」
 「どっちでもいいよ」
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そんな感じで、出来上がった提出用の名簿はとてもアバウトなものとなり、それはそのまま夜になって受け取りに来た刑事に手渡された。


当時の自分にそれほど強いプライバシーや人権に対する保護意識はなかったけれど、それでもいくら犯罪捜査の為とは言えこのような個人情報を警察にそのまま渡すことには大きな抵抗があり、“手抜きの”名簿はそんな自分の気持ちの表れでもあった。


ちなみに当時このビデオレンタル店を経営していた会社には、警察からの要請に対して協力的にならざるを得ない事情も色々とあったらしい。この店舗に関して言えば、夜間、ビデオの返却に来た客の駐車違反を見逃してもらったりもしていたようだ。



いずれにしても、どのような形でいつ誰が「容疑者」として捜査線上にのせられてるか分かったもんじゃないのであり、そのこと自体は避けられなくても、まずはいつでも自分のアリバイが証明できる(証明してもらえる)生活をこそ続けていかなくちゃいけないんだなと今回あらためて強く思った。





*このビデオレンタル店は現在営業しておりません。
(写真は番組からのキャプチャ画像であり、今回のエントリーの内容とは一切関係ありません)